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細胞分子生物学Ⅰ 第8回

第8回 2019/6/5

  • 講師:正井 久雄

細胞が増えるしくみ

シグナル伝達

細胞周期

染色体ダイナミクス制御の基本

細胞が増えるとは
  1. 細胞の容積が増加する
  2. 30億塩基対を正確にコピーする
  3. 46本に分割された全長2mの長さのDNAを正確に2つの細胞に振り分ける。(2cmのボールの中に2kmの長さの糸が詰まっている状態)
この過程は大変複雑であるが、多くのがんの根本的原因はこの過程に異常が生じることにある!!

動物細胞の細胞増殖の制御

  • 細胞内シグナル伝達: 休止している細胞の増殖因子(あるいは分化因子)による増殖制御
  • 細胞周期制御: すでに増殖している細胞の増殖サイクル制御

細胞膜にある受容体が、増殖シグナルを外部から受け取り、そのシグナルを核内へと伝えていく。 cdk(キナーゼ,リン酸化酵素)が重要な役割を果たす。

Rbが重要。Rbがなくなるとガンになる。→がん抑制遺伝子という概念

んじゃ、なんでなくなるん? → E2Fという転写因子に結合している。E2Fが活性化されるとDNA複製に必要な酵素が

真核細胞のDNA複製制御についていの原則

  • DNA複製はS期のみに起こる
  • DNA複製はひとつのサイクルで1回しか起こらない
  • DNA複製は完了するまでM期は始まらない
  • DNA時間的空間的パターンの一部は細胞の型や分化発生の段階に特異的であると同時に、stochasticな性質を有する。

真核細胞染色体DNA複製

末端を保護するためにテロメアがある??

  1. DNA複製は特定の領域から開始する(分化細胞)
  2. 複数の複製起点が染色体上に存在する。
  3. どこの複製起点がいつ活性化されるかという複製のプログラムは集団として細胞型に特有である。
  4. しかし、個々の細胞、あるいは、個々の細胞周期における選択は偶然性を伴う。
  5. 複製起点の選択パターンは発生の過程で、あるいは細胞腫により異なる可能性がある。

複製開始

preRC(prereplicative complex)はORC(Origin Recognition Complex)とMCM(Minichromosome Maintenance)から構成されており、これをCdc7 kinaseが活性化することにより、複製が開始する。

ORC(Origin Recognition Complex)

  1. ATP依存的に複製起点に結合
  2. 6個のサブユニットから構成される。
  3. 複製に必須。
  4. 遺伝子発現制御(サイレンシング)にも関与。
  5. Orc1とOrc5はATPを結合する。Orc1はOdc6に類似する。

MCMタンパク質複合体

  1. 6個の類似した構造のサブユニットからなる。
  2. MCM4-6-7複合体はDNAヘリカーゼ活性を有する。
  3. 全てのサブユニットがDNA複製に必須。
  4. MCMはCdc7キナーゼの標的である。
DNA複製がおかしくなると
  • 細胞増殖の停止あるいは異常な増殖
  • 特定の細胞増殖の異常(神経性疾患?)
  • 特異的な臓器の発生異常
  • 遺伝的不安定性の増大 → 癌などの疾患、老化の原因
  • どのようなゲノム変動がゲノム不安定性をもたらすか?

    1. DNAをコピーする時(複製)の誤り
    2. DNAのコピー時の誤りをきちんと元に戻せない
    3. DNAに傷がついていてもそれを正しく修復できない
    4. 染色体をきちんと二つの細胞に振り分ける(分配)ことができない
    5. ウイルスなど外来遺伝子の挿入や移動
    6. 染色体の末端(テロメア)の構造がおかしくなる
    7. 別々のDNAの間での異常な連結やシャッフリングがおこる(相同組換え)

    染色体/ゲノム動態制御の破綻と疾患

    疾患 症候群
    染色体複製開始の異常による疾患 ロスモンド・トンプソン症候群(Rothmond-Thomson syndrome)
    染色体複製チェックポイントの異常による疾患 毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia: AT)
    ファンコーニ貧血(Fanconi animia: FA)
    染色体接着の異常による疾患
    染色体の分配の異常による疾患 クラインフェルター症候群
    1がた莉センセファリー(紡錘糸形成異常)
    クレスト症候群(動原体形成異常)
    染色体組換え因子の異常による疾患 ナイミーヘン症候群
    AT様疾患
    家族性乳がん(Familiar breast cancer: BRCA2, アンジェリーナ・ジョリーがこれ)

    がん

    がんを意味する"cancer"はギリシャ語でカニを意味する"Karkinos"から来ており、がん細胞からのびる血管の様子がカニの足に似ていることからこの名前がつけられた。

    • 現在も日本人の死亡原因の30%を占め、年間40万人が新たに診断され、24万人が死亡している。
    • がんの原因となる変異(染色体の異常などで遺伝子が変化すること)は、以下の要因によって起こる。
      • 自然発生(老化により増加する)
      • 環境因子による誘発(紫外線、放射線、化学物質)
      • ウイルス感染による誘発
    • がんの羅患率は加齢に伴って指数関数的に増加することが知られている。
    • がんは、ポリープ→早期がん→進行がんと進化する。
    • どんな遺伝子でも変異が起こるとがんになるわけではなく、以下の細胞が秩序正しく増えるのに必要な遺伝子が変異するとがんになる。
      • 細胞増殖のシグナル伝達に関わる因子
      • 細胞周期の進行を行う因子
      • 細胞増殖、細胞周期にブレーキをかける因子
      • DNA複製の誤りを修正する因子
    • 細胞増殖のシグナルは、伝言ゲームのように細胞外から核内に伝達される。これが無制限に開始されると細胞ががん化する。
    • 分子標的治療薬として、がんの原因になる特定の分子を標的としたがんの治療薬がある。
      • HER2受容体に対する人型モノクローナル抗体(ハーセプチン)
      • Bcr-Ablタンパク質に対する阻害化合物(グリベック)
      • EGF受容体チロシンキナーゼに対する阻害化合物(イレッサ)

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    Published
    Jun 5, 2019
    Last Updated
    Jun 5, 2019
    Category
    細胞分子生物学Ⅰ
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    • 3S 95
    • 細胞分子生物学Ⅰ 14
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