第5回 2019/5/31
糖鎖科学
遺伝情報の流れ
DNA(第一の生命鎖)からタンパク質(第二の生命鎖)への遺伝情報の流れをセントラルドグマと言う。ここで、タンパク質の翻訳語修飾にはリン酸化・アセチル化・メチル化・ユビキチン化…など様々だが、ここでは糖鎖修飾に注目する。糖鎖は第三の生命鎖とみなす事ができる。
鎖状高分子 | 単量体 | 単量体同士の結合 |
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第一の生命鎖:核酸(直鎖) | ヌクレオチド | ホスホジエステル結合 |
第二の生命鎖:タンパク質(直鎖) | アミノ酸 | ペプチド結合(アミド結合) |
第三の生命鎖:糖鎖(直鎖・分岐) | 単糖 | グリコシド結合(エーテル結合) |
糖は
- 自然界に最も豊富に存在する生体分子である。
- 炭素、水素、酸素を \(\mathrm{C}_n:\mathrm{O}_{2n}:\mathrm{H}_n\) の比で含んでおり、炭素の水和物(炭水化物)とも呼ばれる。天然には \(n=3\sim10\) の糖がある。
- 生体内で代謝されてエネルギーとなる(グルコースなど)
- 生物の構造を作る(植物細胞壁のセルロース、昆虫や甲殻類外骨格のキチンなど)
- 他の生体分子の材料となる(脂肪酸、プリン塩基、グルタミン酸など)。リボースやデオキシリボースは遺伝物質「核酸」にも含まれる。
糖の書き方
鎖状構造はFischer投影式
ex.)三炭糖:グリセルアルデヒドとジヒドロキシアセトン
環状構造はHaworth式
- 六個の原子でできている環をピラノース環
- 五個の原子でできている環をフラノース環
- アルデヒドを1番目として見た時の5番目の炭素についている6番目の \(\mathrm{CH}_2\mathrm{OH}\) の向きと1番目の \(\mathrm{OH}\) 基の向きで \(\alpha,\beta\) と言う名前がついている。
異性体
名前 | 定義 |
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構造異性体(Constitutional isomer) | 組成式は等しいが原子の間の結合関係が異なる分子 |
立体異性体(Stereoisomer) | 同じ構造異性体同士で、3次元空間内ではどう移動しても重ね合わせることができない分子 |
光学異性体(Diastereomer) | 立体異性体の一種で,偏光面の回転の向きを異にする分子 |
鏡像異性体(Enantiomer) | 立体異性体の一種で、原子の立体配置が互いに鏡像の関係となっている分子 |
Anomers | 水酸基が \(\mathrm{C}_6\) の \(\mathrm{CH}_2\mathrm{OH}\) に対し、環平面の「同じ側」にあるか「反対側」にあるかの違い |
Epimers | 不斉炭素原子の1カ所のみにおいて立体配置が異なる糖同士 |
コンフォメーション
ピラノース | フラノース |
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椅子型と舟型。椅子型の方が安定。 | 封筒型。C-3とC-2 |
グリコシド結合が多糖の構造を決める
構造 | 直鎖構造 | 空間のあるらせん |
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例 | Cellulose | Starch and glycogen |
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