3S
  • Portfolio Top
  • Categories
  • Tags
  • Archives

細胞分子生物学Ⅰ 第13回

第13回 2019/7/17

  • 講師:大杉 美穂
  • 参考書:Molecular Biology of the Cell

分裂の方向

例えば上皮細胞などの、管腔構造(管状)の細胞がどっち向き(長く伸びる方向/太くなる方向)に分裂するか、とその回数によって、組織がどのように大きく成長するかが決まる。

同様にシート状の細胞に関しても、分裂の方向によってどっちの向きにどのように広がるかが決まる。また、もし「基底膜に接着する」という条件が細胞の生存に必要である場合、垂直方向に伸長するとその条件を満たさなくなってしまう。

また、分裂方向がランダムであれば全方向への拡大が起こり、揃っていれば分裂軸方向への伸展が起こることがわかる。

「基底膜に接している」というのは生育に重要な条件であることが多い。この時、基底膜に対して水平に軸があれば、2つの娘細胞は共に生育できるが、垂直に軸があれば娘細胞のうち一方のみしか生育できない。このように、単純な軸の向きだけで娘細胞の運命を左右することもある。

分裂軸の決定

最初の分裂軸の方向が、組織の大きさを決める重要なファクターになっていることがわかった。(正確には、分裂 + 移動によって細胞の運命が決まる。)

分裂軸を決めるのに極めて大事なのは、中心体から細胞膜へと伸びるアストラル微小管(星状微小管)と細胞膜の一部に局在化するタンパク質との連携である。

細胞膜と星状微小管の結合は以下のようになっている。

細胞の中央に紡錘体を配置するメカニズムについては、以下で説明できる。

  1. 端に寄ると、PLKが働きダイニンが存在できなくなるので、そちら側に引っ張る力弱まる(ダイニンは紡錘体を端に引きつける)
  2. 多少前後に動きながら、最終的に紡錘体が細胞の真ん中に揃う。
  3. 均等な分裂が起こる。

方向を決める因子:アクチン

分裂の向きを決めるメカニズムは色々なパターンがあるが、どのパターンにおいてもアクチンが大事であることがわかっている。そこで、アクチンが方向制御に大事であることが実証された実験を紹介する。Nature

  • カバーガラスに細胞外基質(フィブロネクチン)をプリンターの技術を応用して任意の形に(細胞1個分ぐらいの大きさ)プリントし、その上にHeLa細胞を乗せて培養する。
  • 最初は基質に合わせて細胞接着ができるので、基質と同じ形になる。
  • 分裂をするときには一度丸くなる。
  • 細胞質分裂まで進んだ後の細胞の配置を見ると、再び気質がある部分にしか細胞接着が作れないので、元のプリントした基質の形と同じようになる。
  • このとき、細胞分裂の方向を見ると、最初の基質の形に特異的であることがわかる。

中心体を蛍光標識することでどの段階で中心体の位置が制御されるのかを調べたところ、分裂の途中で制御されることがわかった。つまり、間期の間の細胞接着に左右はされるが、方向を決める制御が「実際に起こる」のは分裂期の途中である。

ここで疑問となるのが、「間期の間の細胞の形」と「細胞外基質との接着」のどちらがシグナルとなって分裂の方向を決めているのか?

そこで、X型や二型などの様々な基質を用意した。

これらの型は全て同じ形(正方形)になるが、接着が起こっているのはバラバラである。(上図ヒートマップ参照)

すると、上図下のような分裂方向を示した。これより、「細胞の形ではなく、分裂期に入る前にどこに接着があったか(どこに引っ張られていたか)」が分裂の方向を決めていることがわかった。

だが、分裂時には接着が取れて細胞は丸くなる。どのようにして影響を与えているのだろうか? →走査型電子顕微鏡で見たところ、丸くはなるが、一部(リトラクションファイバー, retraction fiber)は弱く接着したままであることがわかった。

以上のことから、次のようなモデルが提唱された。

  • 細胞外基質が存在する接着ゾーンには、分裂期になってもリトラクションファイバーを介した接着が残る。
  • 紡錘体の星状微小管の先端がリトラクションファイバーの細胞側の先端と結合すると、微小管が引っ張られる力が働く。
  • それにより紡錘体軸の方向が決定される。
  • ここまではあくまでモデルなので、「この仮説が正しければ、〇〇と言う実験をすれば××が起こる(起こらない)はず」というのを行った。

    • 十字型の基質を用意。
    • リトラクションファイバーが十字方向にできる。
    • レーザー照射によって縦横片方のリトラクションファイバーを切断する。
    • 分裂軸の向きが変わった。

    これより、やはりリトラクションファイバーに引っ張られる力が紡錘体軸の方向を決めていることが確認される。

    卵細胞

    卵細胞もかなり極端な非対称分裂をする。中心体(PCMはあるが、中心小体がないので、一箇所にPCMが集まったオルガネラとしての中心体)がない。

    オルガネラ; 細胞の内部に存在する機能を持つ構造体。 核、ミトコンドリアや葉緑体のようにそれ自身でゲノムDNAを持つものや、ゴルジ体、小胞体、リゾソーム、ペルオキシゾーム、液胞のように膜構造を持つもの、リボソームのような複合体として存在するものなどがあり、それぞれ細胞内で重要な機能を果たしている。

    すると、アストラル微小管がほとんど存在しないため、上記のモデルが通用しないのでは? →紡錘体を膜の近くまで寄せている力は何なのか?

    中心体が存在しないので、最初はランダムに微小管が集合する。核もランダムに配置されるが、大抵どちらかが膜に近く、どちらかは膜から遠い。

    このとき、以下のことが様々な実験からわかった。

    • どちらかの膜に寄る際に、膜に近くにつれて速度が増していく。
    • アクチン繊維を壊すと動かない。
    • アクチンのメッシュワークが細胞中にはりめぐらされている。

    →たまたま膜から極のところまでくっついたものが存在すると、一本の線で繋がれたことになり、その上をミオシンが動き、極ごと膜方向に動かすことになる。ここで、膜から近ければ近いほど、一本の線で繋がれるアクチンの量が確率的に増えることになる。

    上記のモデルで説明が可能では??(現在最有力)

    卵細胞の特徴

    • クロマチンが細胞膜近くにくると、膜直下のアクチン重合を促進して「アクチンキャップ」を形成し、細胞膜を外へと押す。
    • 表面に微絨毛が存在しており、これが卵と生死の細胞膜融合に必要
    • 卵減数第二分裂中期の染色体が存在する付近の卵細胞膜では、アクチンがメッシュワーク状に再編成されるため、微絨毛ができない。
    • 微絨毛がないゾーンは精子が接着できない。これによって、精子核の侵入によって紡錘体が壊れることを防ぐことができる。
    • アクチンキャップがある、と言う事実はわかっていたが、The Ran GTPase mediates chromatin signaling to control cortical polarity during polar body extrusion in mouse oocytes.などによって詳しくわかってきた。

    • « シミュレーション実習 Day5
    • シミュレーション実習 Day6 »
    hidden
    Table of Contents
    Published
    Jul 17, 2019
    Last Updated
    Jul 17, 2019
    Category
    細胞分子生物学Ⅰ
    Tags
    • 3S 95
    • 細胞分子生物学Ⅰ 14
    Contact
    Other contents
    • Home
    • Blog
    • Front-End
    • Kerasy
    • Python-Charmers
    • Translation-Gummy
      • 3S - Shuto's Notes
      • MIT
      • Powered by Pelican. Theme: Elegant