第10回 2019/6/28
O-結合型糖鎖(ムチン)
この日はかなりこの部分の話をされていたが、「テストに出題されるもの=重要」と判断し、テスト範囲の内容を消化する。
期末試験出題2問
# | 内容 |
---|---|
1 | N-Glycanの生合成 インフルエンザウイルスの感染 糖タンパク質の品質管理 抗体糖鎖の役割 |
2 | 糖・糖鎖の構造 Fischer投影式・Haworth式 異性体構造 |
1
N-Glycanの生合成
※N-結合型酵素は、ゴルジ体を通過する過程で糖転移酵素により段階的に修飾を受ける。
N-結合型タンパク質糖鎖において、14糖鎖の前駆体は標的タンパク質のポリペプチド鎖のアスパラギンへ付加される。
この前駆体の構造は、一般的な真核生物では以下を含む。
- 3分子のグルコース
- 9分子のマンノース
- 2分子のN-アセチルグルコサミン
この複合体は、キャリアー分子であるドリコールリン酸に結合してポリペプチド鎖の適した位置へ運搬される。
N-結合型糖鎖には主に、との2種のタイプがある。
- オリゴマンノース型糖鎖は、2分子のN-アセチルグルコサミンと多数のマンノース残基からできている。
- 複合型糖鎖は、多種の糖と元々の2分子より多くのN-アセチルグルコサミンを持つ。
なお、糖鎖が上記のどちらかは、ゴルジ体の糖タンパク質に影響を受けやすいためそれに依存すると考えられている。
オリゴ糖鎖は、オリゴ糖トランスフェラーゼによってトリペプチド配列がAsn-X-SerまたはAsn-X-Thrのアスパラギン残基に結合される。この配列はシークオン(sequon)配列として知られている。
なお、オリゴ糖転移酵素として以下の2つが知られている。
- OSTA:トランスロコンと会合して新生ペプチド鎖にオリゴ糖を転移
- OSTB:トランスロコンから遊離したペプチド鎖にオリゴ糖鎖を転移
インフルエンザウイルスの感染
インフルエンザウイルスの表面には、以下の2種類のウイルス由来のタンパク質が発現している。
- ヘマグルチニン(HA):細胞内のシアル酸を細胞表面に出芽させる。
- ノイラミダーゼ(NA):シアル酸と結合し、ウイルスが中に入り込む。
生物種によってインフルエンザウイルスの感染性が異なるのは、ウイルスが認識する宿主細胞の糖鎖末端が異なるためである。
糖タンパク質の品質管理
細胞内において、糖鎖はタンパク質の成熟・輸送・分解の過程における目印の役割を果たしている。
- 小胞体内で翻訳された新生タンパク質の折りたたみの補助とゴルジ体への輸送
- 折りたたみに失敗したタンパク質の細胞質への輸送と分解
といった一連の過程は、糖鎖とそれを認識するレクチンの相互作用を通じて決定されている。
抗体糖鎖の役割
抗体の構造を保つのに重要な役割を果たしているらしい。
2
糖・糖鎖の構造
名前 | 構造 | 名前 | 構造 | 名前 | 構造 |
---|---|---|---|---|---|
グルコース | ガラクトース | マンノース | |||
スクロース | ラクトース | マルトース |
- N-Glycan アスパラギンにN-アセチルグルコサミンが2つと、マンノース3つが結合し、この構造を基本としてさらにフルクトース、ガラクトースなどが結合している。
- G-Glycan セリンまたはスレオニンにN-アセチルガラクトサミンが結合、これを起点としてがラクトースやシアル酸などが結合する。
- グリコシドグリカン 2糖の繰り返し構造となっている。コアタンパクはない
- GPI-アンカー ホスファチジルイノシトールにグルコサミンとマンノース3とエタノールアミンリン酸が直鎖状に結合し、エタノールアミンリン酸がタンパク質を結合。
Fischer投影式・Haworth式
鎖状構造はFischer投影式
ex.)三炭糖:グリセルアルデヒドとジヒドロキシアセトン
環状構造はHaworth式
異性体構造
名前 | 定義 |
---|---|
構造異性体(Constitutional isomer) | 組成式は等しいが原子の間の結合関係が異なる分子 |
立体異性体(Stereoisomer) | 同じ構造異性体同士で、3次元空間内ではどう移動しても重ね合わせることができない分子 |
光学異性体(Diastereomer) | 立体異性体の一種で,偏光面の回転の向きを異にする分子 |
鏡像異性体(Enantiomer) | 立体異性体の一種で、原子の立体配置が互いに鏡像の関係となっている分子 |
Anomers | 水酸基が \(\mathrm{C}_6\) の \(\mathrm{CH}_2\mathrm{OH}\) に対し、環平面の「同じ側」にあるか「反対側」にあるかの違い |
Epimers | 不斉炭素原子の1カ所のみにおいて立体配置が異なる糖同士 |