第4回 2019/7/5
- 講師:黒田 真也
- 教科書
- 参考書
生化学反応(高次反応)
※ 様々な反応系を数式に落とし込むために、色々な高次反応とそれに対応する微分方程式の立て方を、『岩波教科書 現代生物科学入門第8巻「システムバイオロジー」第4章 生命現象の動的特性 付録A~E pdfファイル』を通して学んだ。
A-1)高次反応とHill式
以下のように、\(n\) 個の分子が同時に別の分子に結合する \(n\) 次反応を考える。
ただし、この時総和保存が成り立つと考え、簡単のためにここでは
が成り立つものとする。この時、複合体 \(A^nB\) の生成速度 \(\frac{d[A^nB]}{dt}\) は以下の微分方程式で与えられる。
ここで、平衡状態では \(\frac{d[A^nB]}{dt} = 0\) が成り立つので、式 \((\mathrm{A.}5)\) にこれを代入し、\(K=\frac{k_b}{k_f}\) として \([A^nB]\) について整理すると、
が得られ、これをHill式と呼ぶ。
A-1)高次反応とAdalr式
Hill式では、\(n\) 個の分子が同時に結合するモデルを考えたが、Adalr式では以下のように、\(n\) 次反応が段階的に進むモデルを考える。
- \(K_j\) は、先ほど考えた \(K\)(解離定数)の逆数であることに注意
- \(S\) の総量は一定
- \(P\) に対する \(S\) の平均結合次数 \(r\) は以下で表される(\(0<r<n\))
$$r = \frac{\text{Pに結合したSの濃度}}{\text{全Pの濃度}} = \frac{1[P_1] + 2[P_2] + \cdots + n[P_n]}{[P_0] + [P_1] + \cdots + [P_n]}$$
ここで、\((\mathrm{A.}7)\) のそれぞれの反応を微分方程式で表すと、
となるが、平衡状態では \(\frac{d[P_0]}{dt},\ldots,\frac{d[P_{n-1}]}{dt} = 0\) なので、\((\mathrm{A}.9)\) を漸化式として解くと、
ゆえに、
したがって、\((\mathrm{A.}12)\) を \((\mathrm{A.}8)\) に代入して、
が得られ、これをAdair式と呼ぶ。
ここで、\(S\rightarrow\infty\) とすると、
※ 定性的には、\(r\) は \(P\) に存在している \(n\) 個の結合サイトのうち、\(S\) が結合している結合サイトの平均値のことを示している。 したがって、\([S]\rightarrow\infty\) とした式 \((\mathrm{A.}14)\) では、\(P\) の結合サイト全てに \(S\) が結合していることを意味する。
また、リガンドの \(S\) の \(P\) に対する結合飽和度は \(Y_s=\frac{r}{n}\) で得られ、\([S]\rightarrow\infty\) のとき、\(Y_s=1\)