- 講師:樋口秀男
エネルギー生産系の仕組み(細胞内小器官)
光関連の現象 | 細胞・器官 | たんぱく質等 |
---|---|---|
眼で見る | 視細胞(桿体、錐体細胞) | ロドプシン等 |
光合成 | 葉緑体 | 光システム(タンパク質複合体) |
蛍の光 | 発色細胞 | ルシフェリン+ルシフェラーゼ |
クラゲの光 | 発色細胞 | エコーリン、GFP(green fluorescence protein) |
日焼け | 色素形成細胞(メラノサイト) | メラニン(チロシンの重合体) |
体内時計 | 目のメラノプシン発現網膜神経細胞 | メラノプシン |
ATPを作るプロセス
- 光合成(photosynthesis)は、高等植物や緑藻(青色細菌)が葉緑体(クロロプラスト)内で行う、二酸化炭素の固定反応である。
- この過程で水が酸素に酸化され、二酸化炭素は還元されて糖になる。
- 光合成は大きく2つの段階に区別される。
- 1つは明反応と呼ばれ、光のエネルギーを利用して水が酸素に酸化されるとともに、二酸化炭素の還元に必要な \(\mathrm{NADPH}_2^+\) と \(\mathrm{ATP}\) をつくりだす。
- もう1つの段階は暗反応と呼ばれ、\(\mathrm{NADPH}_2^+\) と \(\mathrm{ATP}\) を利用して二酸化炭素から種々の糖がつくられる。
- クロロプラスト中の大部分のクロロフィルは光を集めるアンテナの役割を果たす。吸収された光子のエネルギーはアンテナクロロフィル間を励起エネルギーとして移動し、アンテナクロロフィルよりも励起エネルギーの低い反応中心クロロフィルに集められる。
FRET(Fluorescence resonance energy transfer)
$$\text{Transfer Efficiency at two rates: } E= \frac{k_T}{k_T+k_F} = \frac{1}{1 + \frac{k_F}{k_T}}$$
- \(k_T\):Donor から Acceptor に移動する速度
- \(k_F\):Donor が吸収する速度
Chl(from) | Chl(to) | 移動効率(移動距離) |
---|---|---|
b(F) | a(A) | 高 |
b(F) | b(A) | 中 |
a(F) | a(A) | 中 |
a(F) | b(A) | 低 |
幅 \(L\) の中の電子のエネルギー準位:\(E_n = \frac{1}{8m}\left(\frac{nh}{L^{\prime}}\right)^2\)
フェミルの黄金律
時間的に変化しない弱い相互作用(摂動)のある電子系が、あるエネルギー固有状態から別のエネルギー固有状態へ移る際の単位時間あたりの遷移確率は、摂動法(時間で展開)の最低次数として近似計算できる。
- 遷移速度 \(k_T\) は、エネルギー固有状態の単位時間あたりの遷移確率である。
$$\Psi_{\mathrm{Da}}\Psi_{\mathrm{Ab}}\underset{k_T}{\longrightarrow}\Psi_{\mathrm{Db}}\Psi_{\mathrm{Aa}}$$
- Da: Active state of Donor
- Ab: Ground state of Acceptor
光合成の概要
- 水を分解して、電子を膜間に入れる。
- 光を用いて電子の酸化還元電位を上げる。
- 酸化還元電位を利用してチラコイド外のプロトンを内側に輸送する。
- 内側のプロトンのケミカルポテンシャルを利用してATPを合成する。
まとめ
- 共役長が長くなると吸収波長は長くなり、可視光の利用が可能となる。
- 分子間距離が近いとエネルギー移動や電子移動が起こる。電子移動の方向は、酸化還元電位に依存する。
- エネルギーを酸化還元電位に交換する(逆も)
- 生物は、多数のタンパク質が上記1-3の原理を巧みに利用して、光化学反応(葉緑体内の光合成)や電子伝達(ミトコンドリア内)の機能を行う。
- ATPを合成するF1,F0は高効率でATPを合成する。特に、F1は仕事効率が約100%である。