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遺伝子機能学 第6回

第6回 2019/5/30

講師:塩見 美喜子

講義概要

  • gene
  • gene expression
  • control of gene expression
  • non coding RNAs

gene

Q: What is "gene"?
A: A gene is the DNA element that provides the instruction for making a specific protein.

gene expression

  • Transcription the synthesis of RNA using information in the DNA
  • Translation the synthesis of a protein (or polypeptide) using information in the RNA

genome size

Nature 435,43-57 2005によると、以下の関係がわかった。最新の情報はGENCODEで調べることができる。

生物 ゲノムサイズ(Mb) 遺伝子の数
ヒト(human) 2,851 22,287
線虫(C.elegans) 103 19,893
ショウジョウバエ(D.melanogaster) 180 13,676

何度も聞いた話だが、「遺伝子の数が生物の機能の複雑さに関係していなさそう」だとわかった。我々ヒトの「高等な」機能を実現しているメカニズムとしていくつか挙げられているが、今回は以下の2つに絞る。

  • Alternative splicing (Reaction)
  • Non-coding RNAs (Material)

Eukaryotes and Prokaryotes difference

セントラルドグマというように、遺伝子の転写・複製は進化的に保存されており、我々の遺伝子を大腸菌に入れても発現するらしい。

RNA processing

(A)真核細胞(eukaryotes)では、転写で作られたRNA分子に翻訳領域(エキソン)と非翻訳領域(イントロン)が含まれている。この分子の両端が修飾され、酵素によるRNAスプライシング反応でイントロンが除去されてmRNAとなり、核から細胞質へと運びだされ、そこで初めてタンパク質へと翻訳される。

図では、各過程が1段階ずつ順を追って起こるように表しているが、実際にはその多くが同時に起こる。例えば、RNAキャップ構造の付加やスプライシングの開始は普通転写が完了しないうちに起こる。

(B)原核細胞(prokaryotes)では、mRNA分子はもっと簡単にできる。mRNA分子の5'末端は転写開始の、3'末端は転写終結の際に作られたままである。原核細胞には核がないため、転写と翻訳が同時に同じ細胞区画で起こるので、細菌のmRNAの翻訳は、転写の完了前に始まることが多い。

RNA polymerase

大腸菌は1つしかRNAポリメラーゼを持っていないが、その一方で真核生物は3つのRNAポリメラーゼを持つ。

タイプ 転写する遺伝子
RNA polymerase Ⅰ リボゾームを構成する rRNA
RNA polymerase Ⅱ タンパク質の鋳型となる mRNA
RNA polymerase Ⅲ リボソームでアミノ酸をデコードする tRNA

Polymerization of nucleic acids using same templates

  • DNA replication (deoxyribonucleic acids)
  • Transcription (ribonucleic acids)
difference
  • Enzyme
  • Primer dependency (DNA: independent, RNA: dependent)
  • Substrates
  • Appearance of products (double-stranded or single-stranded)
  • Mistake rates (DNA synthesis: $1/10^7$, RNA synthesis: $1/10^4$)
  • Transcription in eukaryotes

    説明 図形
    プロモーターには転写開始部位から25塩基離れた位置に、TATAボックスという塩基配列が存在する。TFⅡDがTBPというサブユニットを介してTATAボックスを識別して結合すると、その隣にTFⅡBが結合できるようになる。
    残りの転写基本因子とRNAポリメラーゼがプロモーターに結合する。
    TFⅡHがATP加水分解のエネルギーを使って転写開始部位のDNA二本鎖を解離させ、鋳型鎖を露出させる。また、TFⅡHがRNAポリメラーゼⅡをリン酸化して立体構造を変化させるので、ポリメラーゼは転写基本因子から離れて転写伸長期に進める。図のように、ポリメラーゼ分子から長く尾のように突き出したC末端ポリペプチド鎖、別名C末端領域(CTD)がリン酸化される。

    ※なお、図の位置関係は in vitro での実験から推定したもので、in vivo で転写基本因子がプロモーターに結合する正確な順序は遺伝子ごとに異なるらしい。

    因子名 サブユニット数 転写開始における役割
    TFⅡD 1-11 TATAボックスを識別する。
    転写開始部位付近の他のDNA配列を識別し、TBPのDNAへの結合を調節する。
    TFⅡB 1 プロモーターのBRE配列を識別し、RNAポリメラーゼを転写開始部位へと正しく配置する。
    TFⅡF 3 RNAポリメラーゼとTBP、TFⅡBの結合を安定化し、TFⅡEとTFⅡHを引き寄せるのを助ける。
    TFⅡE 2 TFⅡHを引き寄せ、調節する。
    TFⅡH 9 転写開始部位のDNAをほどき、RNAポリメラーゼのCTDのSer5をリン酸化し、RNAポリメラーゼをプロモーターから乖離させる。

    Phosphorylation

    マウスとヒトのCTD(尻尾部分)には52回、ショウジョウバエCTDには45回、酵母のCTDには25〜27回、原虫CTDには15回の反復が見られる。これらはリン酸化されやすいアミノ酸であり、CTDはin vitro転写には全く不要だが、効率的なRNAプロセシングには必要である。

    RNAPolⅡ distribution

    転写の段階によってRNA合成酵素のどこにリン酸化が起こるのかが異なる。したがって、逆にそれを元にリン酸化の濃淡から転写の段階を推測することができる。

    RNA processing

    RNA分解酵素を Eukaryotes はたくさん(強い)持っているので、守るためにRNA capが必要である。また、同様の理由でポリAテールも必要である。

    Prokaryotesは1つのmRNAが複数のタンパク質をコードしており、ポリシストロニック(polycistronic)だが、一方でEukaryotesは1つのmRNAが1つのタンパク質をコードしており、モノシストロニック(monocistronic)である。

    Capping

    Function:

    • RNA stabilization
    • splicing
    • RNA export
    • translation efficiency
    説明 図
    RNA転写産物はの5'末端は元々三リン酸だが、(加水分解によって?)一つリン酸が取れる。その後、GTPが結合し、メチル基が入る。
    キャッピング部分は、5'-5'の結合となる。

    RNA polumerase Ⅱは、「RNA合成工場」と呼ばれている。

    Splicing

    イントロン部分が転写されないため、遺伝子のサイズと転写生成物のサイズが異なる。この時、ほとんどのイントロンの塩基配列は、GU(一部はGC)で始まりAGで終わっており、「メジャーイントロン」あるいは「U2型イントロン」と呼ばれる。一方で、一部の遺伝子にAUで始まりACで終わる「マイナーイントロン」、「U12型イントロン」あるいは「ATACイントロン」と呼ばれるイントロンが存在し、ヒトではイントロン全体の約0.1%を占めている。

    説明 図
    イントロン中の特定のアデニンヌクレオチド(A)が5'スプライス部位を攻撃し、その部分でRNAの糖-リン酸主鎖を切断する。
    → 切断された5'末端がアデニンヌクレオチドと共有結合で繋がり、RNA分子中にループを作る。
    → 生じたエキソンの遊離の3'-OH末端が次の絵既存の先頭部分と反応して、2つのエキソンを繋ぎ合わせるとともに、イントロンを投げ縄構造(lariat)として取り外す。

    ※ 遊離したイントロンはやがて個々のヌクレオチドにまで分解され、再利用される。

    イントロンの長さ エキソンの長さ

    イントロンの長さは、ヒトのイントロンは他の動物に比べてもかなり長いことが知られている。長いイントロンを正しく識別できるのすごい。

    ここで、「エキソン明示仮説」というのが提唱されている。

    エキソン明示仮説
    SRタンパクはmRNA前駆体のエキソンに結合して、snRNPを適切なイントロン/エキソン境界へと誘導するという説。
    HnRNP(ヘテロ核内リボ核タンパク)という一群のタンパク質が好んでイントロンと結合し、スプライソームがエキソンとイントロンを区別するのを助けているとされる。

    ポリメラーゼから出てきたRNA分子のコンセンサス配列にCstFとCPSFが結合する。
    さらにタンパク質が結合してmRNAの3'末端を作る。
    まずRNAをポリメラーゼから切り離し、できた3'末端にポリAポリメラーゼ(PAP)がAヌクレオチドを1個ずつ、全部で約200個付加する。ポリAポリメラーゼは鋳型を必要とせず、真核生物mRNAのポリA尾部はゲノムに書き込まれてはいない。

    RNA levels

    • Eef2: ハウスキーピング遺伝子真核生物翻訳伸長因子2 ハウスキーピング遺伝子は、すべての細胞で発現し、エネルギーの代謝や細胞機能の維持に必要不可欠な遺伝子のこと。
    • 神経前駆細胞特異的遺伝子ビメンチン(vim) 読み取りはイントロンではなくエクソンにマッピングされている。

    Liquid-liquid phase separation

    液-液相分離の話をしていた。「アルツハイマーのアグリゲーションも液-液相分離」的なことを仰っていたが、覚えていない…。

    detection

    mRNAがあるからといってそれがコードするタンパク質があるかはわからないので、組織ごとにタンパク質を見る。いくつか方法はある(ちなみにこの日の実験ではウエスタンブロッティングを行なった)ようだが、二次元電気泳動(電気的な性質(Charge)・分子量)やウエスタンブロッディング(Western Blotting, SDS-PAGEを行った後、タンパク質を疎水性膜(メンブレン)に転写し、抗体を用いて特定のタンパク質を検出する方法。この日の午後の実験ではこれを行なってダチョウのタンパク質を分離した。)などが主流。

    control of gene expression

    # 説明
    1 転写の制御
    2 RNAプロセッシングの制御
    3 RNA輸送の制御
    4 翻訳の制御
    5 RNA分解の制御
    6 タンパク質機能の制御

    non coding RNAs

    RNAの種類 機能
    mRNAs(coding RNA) タンパク質のアミノ酸配列を指定
    ここからncRNA
    rRNAs リボソームの基本構造を形作り、タンパク質合成を触媒
    tRNAs 運搬RNA。mRNAとアミノ酸とを結びつけるアダプターとしてタンパク合成の中心となる。
    snRNAs 核内低分子RNA。mRNA前駆体のスプライシングなど、核内での様々な反応に関与
    ここまでで、約9割を占める。
    snoRNAs 核小体低分子RNA。rRNAのプロセシングと化学修飾を助ける
    miRNAs 特定のmRNAの翻訳を阻害し、分解させることにより、遺伝子の発現を調節する。
    siRNAs 低分子干渉RNA。mRNAの選択的分解の誘導とクロマチン構造の凝集によって遺伝子発現を調節する。
    piRNAs piwi結合RNA。piwiタンパクに結合して生殖系列を転移因子から守る。
    lncRNAs 200塩基以上のある程度の長さを持ったRNA。X染色体の不活性化を始め、細胞の様々な反応を調節する

    New central dogma

    従来はタンパク質のみが複雑な生物学的実体を構成し、特徴付けると考えられていたが、最近ではncRNAによる制御プログラムが複雑な表現系とその変化を規定していると考えられている。


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    Published
    May 30, 2019
    Last Updated
    May 30, 2019
    Category
    遺伝子機能学
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    • 3S 95
    • 遺伝子機能学 6
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