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遺伝子機能学 第2回

第2回 2019/4/18

  • 講師:胡桃坂 仁志

エピジェネティクス

体を作るための情報はDNAの塩基配列情報として保存されているが、DNA配列だけで全てが決まるわけではない。

受精卵の細胞は全て同じDNA配列情報を持っているにも関わらず、神経細胞や筋細胞など、明らかに形も働きも異なるさまざまな細胞へと分化していく。

エピジェネティクスと呼ばれるこのメカニズムの本体は、クロマチンの構造にある。

クロマチンの構造が、遺伝子の読み取りのON/OFF制御や、染色体構造の形成を担うことが明らかにされてきている。

オーバーラッピングダイヌクレオソーム

クロマチンの動的な構造変換がDNAの機能の発現を制御することが明らかにされつつあるが、クロマチンの構造変換のひとつとしてクロマチンリモデリングが知られている。

クロマチンリモデリングの際にはヌクレオソームがゲノムDNAにおいて再配置する(ヌクレオソームがあるとそれが邪魔で遺伝子が読めないので)が、その際には、隣接するヌクレオソームと再配置されたヌクレオソームとが衝突し2つのヌクレオソームが重なり合ったオーバーラッピングダイヌクレオソームが形成されると指摘されていた。

しかし、オーバーラッピングダイヌクレオソームの立体構造は明らかにされておらず、その形成の機構や機能などについての知見はほとんど得られていなかった。

そこで、胡桃坂先生らは試験管内におけるオーバーラッピングダイヌクレオソームの再構成に成功し、X線結晶構造解析によりその立体構造を原子分解能で明らかにした。

今回の講義では、その時の研究のフローを教えていただいた。

オーバーラッピングダイヌクレオソームの再構成

  • 先行研究により、あるDNAを用いることにより試験管内においてオーバーラッピングダイヌクレオソームが再構成されることが示されていた。
  • この↑先行研究において示されたDNAおよびヒストン八量体を用いて、塩透析法により試験管内においてオーバーラッピングダイヌクレオソームを再構成した。
  • 再構成されたオーバーラッピングダイヌクレオソームを電気泳動により高純度に精製し、ネイティブエレクトロスプレーイオン化法を用いた質量分析法により解析した。
  • 結果↑は先行研究により示唆されていたオーバーラッピングダイヌクレオソームの構成とよく一致した。
  • 精製したオーバーラッピングダイヌクレオソームをシッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化することにより、オーバーラッピングダイヌクレオソームの単結晶を精製した。
  • 得られた単結晶を用いて、大型放射光施設SPring-8においてX線回折実験を実施し、3.14Åの分解能のX線回折データを取得した。
  • ヒトのヌクレオソームの立体構造をサーチモデルとした分子置換法により位相を決定し、オーバーラッピングダイヌクレオソームの立体構造を決定することに成功した。

立体構造の特徴

立体構造から,オーバーラッピングダイヌクレオソームはヒストン六量体にDNAが巻きついたヘキサソームユニットとヒストン八量体にDNAが巻きついたオクタソームユニットが緊密に重なり合うことにより、250塩基対のDNAがヒストン十四量体のまわりに約3回巻きついた特殊な構造を形成することが明らかにされた。

これは、今までに立体構造が明らかにされたヌクレオソーム(ヒストン八量体にDNAが1.7回転)とは大きく異なる構造であった。

また、同様にしてヒストンが3つ重なったオーバーラッピングトリダイオヌクレオソームも見つかった。これは、2つ重なったものとも構造が異なっていた。

このことから、おそらく「ヌクレオソームは8量体ばかりではない」と考えられている。


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Published
Apr 18, 2019
Last Updated
Apr 18, 2019
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遺伝子機能学
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  • 3S 95
  • 遺伝子機能学 6
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