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細胞分子生物学Ⅱ 第7回

第7回 2019/5/28

講師:山中 総一郎

SMC complex, condensin

SMCタンパク質とは、染色体の高次構造と機能の制御に関わるATPアーゼファミリー、あるいはそれに属するタンパク質の総称。

SMCは、染色体構造維持(Structural Maintenance of Chromosomes)の略。

コンデンシンやコヒーシンなど巨大なタンパク質複合体のATPaseサブユニットとして働く。

コヒーシン(cohesin) コンデンシン(condensin)
4つのサブユニットからなるタンパク複合体。 5つのサブユニットからなるタンパク複合体。
Smc1とSmc3はより合わせコイルであり、2つのサブユニットScc1とScc3により連結される。 Smc2とSmc4の2つの主要サブユニットの頭部ドメインが、3つの別のサブユニットにより連結される。
環状構造を使って姉妹染色分体を取り囲んでいると考えられる。 コンデンシンのサブユニットがM-Cdkによってリン酸化されると、DNA分子を巻く作用が活性化される。これが、有糸分裂の初めにM-Cdkが染色体の再構成を起動させる機構の1つではないかと考えられている。
ATP加水分解のエネルギーを使って、コヒーシンをDNA上に集合させる。 ATP加水分解のエネルギーを使って、姉妹染色分体の凝縮と分離を促す。

Histone Variant, Histone modification

ヌクレオソームは、4種のヒストン(H2A,H2B,H3,H4)各2分子から構成されるヒストン8量体に、約150塩基対のDNAが巻きついた構造である。

ヒストンバリアントは主要型のヒストンと、およそ50%~99%のアミノ酸配列が相同なタンパク質であり、ヌクレオソームを形成する。

ヒトでは、H4を除く各ヒストンに、それぞれ複数のヒストンバリアントが報告されている。代表的なものは、以下。

分類 バリアント
H2A H2AX
H2AZ
macroH2A
H2ABBD
H3 H3.3
CENPA

局在パターン

ヒストンやDNAの化学修飾と同様に、ヒストンバリアントはゲノムDNA上でそれぞれ特徴的な局在パターンを示している。

例えば、H3.3やH2A.B、H2A.Zは転写が活性化された遺伝子上に局在する。特にH3.3は分化後に発現する遺伝子の転写開始点近傍に、細胞分化に先立って取り込まれることが報告されている。

特異な機能

ヒストンバリアントを含んだヌクレオソームは、その構造や相互作用タンパク質の違いによって、特異な機能を発揮すると考えられている。

例えば、セントロメア領域に局在するCENP-Aや、DNAの転写や複製が行われている領域に局在するH2A.Bは、通常のヌクレオソームよりもヒストン複合体に結合するDNAが短い特殊な構造のヌクレオソームを形成することが明らかになっており、特徴的なクロマチン構造の構築に寄与すると考えられている。

Nucleosome, most basic unit of genome

ヌクレオソーム=コアヒストン(H2A,H2B,H3,H4)+ヒストンテール (+DNA)

ヌクレオソーム=立体障害

  • 転写や複製の際にタンパク質が付きにくい。
  • TF(Transcription factor)がDNAを認識できない。

これらのことから、ヌクレオソームがどこにいるかはBasicな遺伝子発現に大きく関係する。

ただ、ヌクレオソームはアクティブな遺伝子の転写開始点(TSS;transcriptional start site)にはあまりいないことが知られている。

ヌクレオソームと転写複製の協調

ゲノム中には、TSSの他にもヌクレオソームがあまりいない場所があり、以下の領域が挙げられる。

領域 説明
転写開始点(TSS;transcriptional start site) ゲノムを鋳型にRNAを合成する転写反応について、これが始まるゲノム上の塩基。その転写を促すタンパク質である転写因子が結合する転写開始点の上流領域をプロモータと呼ぶ。
エンハンサー(enhancer) 遺伝子活性化因子と結合することで3次元的に構造を変えてプロモーターに作用し、転写を活性化させる。
インスレーター(insulator) 隣接する染色体環境の影響を遮断し、その領域に挟まれたDNAの転写調節の独立性を保証するDNA配列。エンハンサーによるプロモーター活性の遮断や位置効果の抑制などの機能がある。

また、ヌクレオソームは動的にダイナミックに変化して転写を制御している。

  • nucleosome density
    • ゲノム上のヌクレオソームの濃度は違う
  • nucleosome turnover
    • ヌクレオソームの入れ替わりのこと。このスピードが速いと転写スピートも速い。
    • 横に移動するだけでなく、出たり入ったりしている

CENP-A, Kinetochore

染色体が娘細胞に正確に分配されるためには、複数のタンパク質がセントロメアと呼ばれるゲノムDNAの領域に集合し、動原体(Kinetochore)を形成しなければならない。

大抵の真核生物では、1本の染色体に1箇所のセントロメアが規定されるが、このセントロメア領域の規定は、DNAの配列によらないエピジェネティックな分子機構によることが知られている。

このセントロメア領域の規定において重要なはたらきを担うのが、セントロメアに特異的に存在するヒストンH3のバリアントであるCENP-Aである。

NGSの応用

NGSによって配列そのものを解析するだけでなく、NGSによって読み取られた配列データのパターンから別のことを調べる手法も確立されてきた。代表的なものは以下。

  • RNA-seq
  • ChIP-seq
  • ATAC-seq
  • Hi-C
  • iRep

ChIP: Elucidating the genomic address of specific mark

目的のタンパク質がDNAに結合しているかどうかを調べる実験。目的のタンパク質は転写因子であることが多い。

  1. DNAを約100塩基対の長さに分割する。(sonication)
  2. 標的タンパク質でDNAを洗浄する。すると、タンパク質はDNAの特定の配列に結合する。(enrichment)
  3. 標的タンパク質に特異的に結合する抗体を使用して、タンパク質が結合しているDNAのみを取得する。
  4. タンパク質が結合した状態でDNAのコピーを増やす。
  5. DNAをシーケンスする。

Hi-C analysis

ゲノム配列そのものからは知ることができない染色体の立体構造を、ゲノム配列のシーケンシングによって明らかにする解析のこと。

DNAの空間的な近接性は、制限酵素処理された断片間でのライゲーションの生じやすさで測れるという考え方が基になっている。

  1. 実際に細胞の中で近接しているDNAとタンパク質の複合体をホルムアルデヒド処理することで固める。
  2. 制限酵素を用いて断片化する。
  3. 端にビオチン化ヌクレオチドを付加する。
  4. ライゲーション処理をする。
  5. 濃縮してビオチンプルダウンする。(ビオチンの付いたもの、つまりキメラ化したものだけを選択的に抽出したいから。)
  6. ペアエンドでシーケンスする。(∵Forward, Reverseのリードがリファレンスゲノムへマッピングされた位置を調べ、それらのゲノム状の領域がもともと空間的に近接していた、と解釈する。)

※ビオチンの付いた部分であり、ホルムアルデヒドで固められた部分そのものをシークエンスしている訳ではない。制限酵素処理された時の配列の長さにも依存してしまう。

※精度の高いリファレンスゲノムがあることが前提。


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Published
May 28, 2019
Last Updated
May 28, 2019
Category
細胞分子生物学Ⅱ
Tags
  • 3S 95
  • 細胞分子生物学Ⅱ 7
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