第10回 2019/6/19
- 講師:正井 久雄
がん細胞の発生
- がんの要因としては色々なものがあるが、「複製の阻害」が発ガンの引き金となっていることがわかっている。
- 停止してしまった複製フォークの適切なプロセッシングは、遺伝的安定性の維持に必須である。
- 特に大腸菌などの原核生物は複製フォークが一箇所しかないので、複製が停止したらいち早く認識して修復する必要がある。
- 停止複製フォークを認識するのがPriAタンパク質である。
PriA欠損変異株の表現型
PriAがなくなると、以下のようになる。
- 増殖速度・生存率の低下、rich media感受性を示す。
- 線状の形態を示す(SOS反応が一部の細胞で誘導されている)。
- DNA障害性因子(紫外線、マイトマイシンCなど)に対する感受性の増大
- 一般的な相同組換え頻度の低下
- 複製フォーク停止(例えば紫外線処理やチミン飢餓)に応答して誘導される組換え依存性の安定的DNA複製(タンパク合成非存在下での連続的な複製)の欠損
PriAタンパク質の生化学的性質
- \(\phi X174\) という一本鎖フィードフォワードDNAの複製に必要
- \(\mathrm{n^{\prime}}\)-pas(primosome assembly site)と呼ばれる小さな一本鎖ヘアピン配列に結合し、プライモソームの形成を促進する。
- \(\mathrm{n^{\prime}}\)-pasあるいはD-loop構造に依存してATP加水分解およびDNAヘリカーゼ活性を示す。
- 合成D-loop様構造、あるいはアレストフォーク様構造に統合する。
- D-loopあるいは停止フォーク構造に特異的に結合する。
- 複製フォークが停止した際の構造は様々であり、Leading strand, Both strand の時にはPriAはくっつくが、Laggin strandの時はつかない。
- PriAが苦手とするLaggin strand の方にはRecGが結合してフォークを巻き戻し(退行)、3'末端が近くに来るようにすると、PriAが結合できるようになる。